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神に祈った事それは...早くあなたのお気に召される様に
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サイダー
2014-07-26 Sat 22:30
『もうあたしの中に湧き上がる泡はない』。
「お疲れ様!」そう言い合って乾杯をし、一口飲んだグラスをテーブルに置いた。
「やっぱり魚の塩焼きは食べたいよね」
「うんうん、そうですね。お好きなものなんでも頼んでくださいね。課長とは食の趣味合うから、わたしなんでも大丈夫ですよ」
隣で何を注文するか楽しそうに迷っている上司を傍目に、ビールのグラスをぼーっと見ながら答えていた時に思った。
ビールのグラスからは、まだ底からしゅわしゅわと小さな泡が上っている。音も立てず湧き上がる泡。そして、すっと消えていくその様は無条件に綺麗だ。

ふとした時のあなたの表情や仕草。あたししか知らないあなたの一枚。あたしを呼ぶ声。抱きしめられている時の感覚。
あたしは、なぜかそんな時のことを思い出す。あたしの中で泡がはじけた時のことを。泡がはじけた時の感覚は、いまでもくっきりと、そして鮮やかに、あたしの中にある。

「じゃあ、シマアジのかま焼きと穴子の天婦羅と地鶏の柚子胡椒焼きと小佐衛門を頼むよ」
上司に言われて、はっとする。それこそ過去の想い出という泡がはじけて今に引き戻されたみたいだと、「いいチョイスですね」なんて笑顔で答えながら思う。
上司は最近の職場事情を開けっぴろげに話している。あたしは一生懸命頷きながらも、なぜあの人のことを思い出したのだろうかと考える。それも、あたしはあの時のことを思い出したときに、あの泡がはじける感覚を愛おしく思っていた。今、湧き上がる泡なんてひとつだってないのになぜなのだろうかと、自分の抱いた感情を腹立たしく思いながら考え続ける。そして、泡がはじける感覚を愛おしく思っていたあとに、“もうあたしの中に湧き上がる泡はない”とはっきりと思ったときの、その固い決意みたいなものの硬さについても。

シマアジのかま焼き、穴子の天婦羅、地鶏の柚子胡椒焼き。きゅうりのお漬け物。イカげぞ。次々と運ばれてくるお料理を小佐衛門を嗜みながら頂く。その間、ずっとどこかであの人との時を、そしてあの人と別れてからの時のことを考えていたけれど、結局なんにもわからないまま、そのうち酔っぱらってしまって、なにも考えられなくなった。

上司と笑顔で別れ、一人で歩く夜道。
「さよならって思えたら、もうすこし楽なのかなって」
大好きな上司との幸せな一時を過ごせたうれしさと、そんな幸せな一時が終わってしまった淋しさを感じながら、すこしふらっとする足取り。何気なく口ずさんだそのフレーズに、あたしは驚いて立ち止まってしまう。ぼーっとする頭の中へ、取り繕うように必死で問いかける。「あたし今なんて呟いた?」。それが嘘であってほしいと願うような気持ちだった。

「愛してるって思うこと、こんな感覚なのかなって」
恐る恐る口にしてみた、その歌の続き。「愛していたのかな?」って、よくわからない自分の気持ちを闇に紛らわせてかき消した。

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