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神に祈った事それは...早くあなたのお気に召される様に
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遊園地
2014-05-28 Wed 23:07
顔を合わせていたのは、ほんの五分ほどだった。
あなたの去っていく姿は、どこか淋しげにも見えたし、すべてに投げやりになっているようにも見えた。風になびくシャツと茶色い髪の毛は、あの雨の降った日を思い出させた。濡れたシャツと髪の毛。まるで捨てられた子犬みたいだと思ったあの時のこと。

あなたはいつものように言い訳をたくさん並べた。あたしは何も言えなくなる。それが嘘だということを知っているから。嘘をつかれていることが悲しかったから。
「ほんとうは怒っているんでしょう?」
何も言わないあたしに、言い訳を並べ続けるあなた。喉仏に含まれていた言葉は、結局出てくることはなかった。
あの時のあたし、もうあなたに何を言っても通じ合うことはないと思っていた。

どれだけの時間を過ごしてきたのだろうか。あたしはあなたを見てきた。必死に想ってきた。それだけは自信があるんだ。だから、あなたのその上手な言い訳も、素直な表情が仮面だということもわかる、わかってしまうんだよ。それが、かなしかった。大好きなあなたに、騙されていたかった。

去っていくあなたのことを、もう追いかけることはできなくて。街の雑踏に消えてゆくのを見つめているだけだった。見えなくなる前に、あたしは諦めたような気持ちとともに身を翻し、反対の道へと帰ってゆく。

捨てられた子犬みたいだと思ったあの日。声をかけても、あなたは返事をしなかった。ただ雨に濡れゆくあなたを、どこまでも守りたいと思ったこと。そんな気持ちがあなたを想う強さになっていた。

ほんの五分ほどの出来事。三百秒には、今までのあなたとあたしが詰まっていた。やりきれない気持ち。しゅわしゅわと弾ける泡と一緒に流す。身体は軽くなって、すこし火照る。ライトは細く、長く、走る。あたしの知らない世界を歩いているみたいだった。

帰り道、いつもと同じように見上げた夜空。
あなたは今頃何を想っているのだろうか。誰と一緒にいるのだろうか。
たくさん煌めく星。ひとつひとつ、あなたへ想うことへと変えてゆく。星の数ほどあなたへの想いを浮かべたとき、すこしだけふっきれた。

最後に見た風になびくシャツと茶色い髪の毛。
あなたへの想いも風になびいて、ふわっと膨らみそのまま飛んでいった。さらさらと流れて、どこかへ消えた。
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