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神に祈った事それは...早くあなたのお気に召される様に
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葡萄
2010-06-08 Tue 11:35
まだ空が水色とグレー色。薄く瑞々しく透き通らせた水彩画で塗られたのような時間。
キッチンはひっそりと、まだ夜中の静けさを残したまま。
ぺたぺたぺた。あたしは裸足でその世界に踏み入れる。
おわりとはじまりが入れ替わる境目はぼんやりとしていて、まるで天国に来てしまったみたいな、そんな気持ち。

天国にはなにもなくて、淋しくはないのだけれど、すこし哀しくなる。
すごく綺麗な色をしているのに、息をしていない空間。人の死顔。

「きれいな死顔でしょう」
いつだか、誰かに言われた時のことを思い出す。
人が死んだ時。棺の中を覗き込んだ時。必ず、誰かがそう言う。
決まり文句、なのだろう。
美容院で髪を茶色く染めていた人が黒染めをした時。
「アジアンビューティー」
決まってそう言うのは、あたしの通っている美容院。
それしか言いようがない、らしい。
決まり文句。同じレベル、なのかな。

やかんから立ち上る白い湯気を見つめながら考える。
湯気は勢いよく広がってゆく。なにもなかった世界にもくもくと。

わたしは野菜室から葡萄を取り出す。
ダンボールパックに白い発泡スチロール紙で包まれた、大きな紫色の実。

ひとつひとつ、丁寧に捥ぎ採る。
水を張ったボウルの中は、紫の実でいっぱいになる。
ひとつひとつ、丁寧に皮を剥く。
透き通った黄緑色に変化する葡萄の実。
水を張ったボウルの中には、剥がれた皮が沈んでいる。
それはまるで朽ちた薔薇の花びらみたいに綺麗なのに、刹那。

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