
マロンが、亡くなりました。
10歳と5ヶ月でした。元気に長生きしてくれました。その日の朝も走っていたくらい元気だったんだって。でも、すこし暑かったみたい。みんなであの子の命を救うために頑張ったけれど、あの子が息を吹き返すことはなかった。やっぱり夏は憎いね。

いつだってそばにいてくれたこの子を失って、すごく静かになった家の中。
カチカチと鳴る爪の音も、暑苦しい息づかいも、あの子といるだけであがる笑い声も、すべてがなくなって、まるで最初からなにもなかったみたい。あの子がいなくなっただけで、流れる空気や色、匂いまでも、すべてが変わってしまった。

でも、あの子に触れていたときのことを忘れたくないと、なにひとつあの子と瞬間を忘れたくないと、最後に握りしめたあの子の手の感覚を思い出しては歯をくいしばる。

ほんとうに大好きだった。キライって言ったときだって、ほんとうは好きだった。それに、あたしがキライって言っても、それでもあの子はあたしのそばでしっぽを振ってくれていた。どんなときでも優しい子だった。そんなマロンがいなくなって淋しいよ。すごくすごく淋しい。こんなに淋しくなるなんてね、わかっていたけれど存在の大きさに胸が締め付けられる。
マロン。ありがとうね。
毎日楽しかった。毎日大好きだった。
一緒にいられてしあわせだった。
マロンが我が家にやってきてくれたことを心の底からうれしく想っている。
安らかな顔をして眠ったあの子におやすみなさい。